SHIMOTOMAI Nobuo下斗米 伸夫 教授

1948年札幌市生まれ。東京大学法学部卒、文部省留学(モスクワ)を経て1978年法学博士(東大)、バーミンガム大(1983-5)、ハーバード大(1992-4)客員研究員、法政大学法学部長(2002-03)、朝日新聞客員論説委員(1999-2002)、国際政治学会理事長(2002-04)、日ロ賢人会議成員(2004-2006まで)。
担当科目、比較政治論、国際政治理論研究(1・2)専門分野 旧ソ連政治、ソ連・ロシア政治史、ロシア・CIS政治、アジア冷戦史、日ロ関係など研究テーマ、日本冷戦史、アジア冷戦史(朝鮮半島)、ロシア政治文化と古儀式派、プーチン・メドベージェフ時代のロシア、日ロ関係史など、ロシア・欧米史料を駆使して未だ謎の多い冷戦史の実像に迫ろうとしている。なかでもロシア・旧ソ連共産党史料をつかった北朝鮮政治史(『モスクワと金日成』2006年、岩波書店)は、韓国語、ロシア語訳が進行中で、またワシントンのウイルソンセンターの冷戦年報に2008年に掲載され、学会の話題をよんだが、今は冷戦期の日本を国際史料で読み解くプロジェクトにも関心を深めている。
またロシア革命をロシア正教の異端派である古儀式派との関連で再解釈をすすめている。

下斗米 伸夫 教授01

研究者になろうと思ったきっかけは

大学卒業時より研究者になろうとしていたので前職はありませんが、38歳にしてソ連崩壊という研究対象の崩壊を目の当たりにしたのは、学者冥利に尽きるものでした。同時に象牙の塔からマスコミの世界とのおつきあいも深くなり、1998年春からは現職のまま3年間、朝日新聞の客員論説委員となりました。そこでの結論とは、専門は大事にしたいということです。
他の分野とのコラボもそれがあってこそです。

下斗米 伸夫 教授02

研究のやりがい、醍醐味を教えてください

今まで1975-6年(ソ連)、1983-5年(英国・バーミンガム)、1992-94年(ハーバード)、そして2008-9年(モスクワ、ロンドン)などで研究生活を送り、世界中でロシア・冷戦などの研究者たちと交流してきました。特に出発時点で歴史から入ったことから、すべての歴史は現代史だ、と実感します。なかでも20代に、ソ連のなかで1920年代のストライキがおきたことを博士論文であつかったのですが、最近の訪問でその労働者達の多くが古儀式派という宗教的異端派であったことがわかったことからロシア史の再解釈を進めています。
チャーチル首相が言ったロシアの謎の解明は意外な方向に進み始めています。研究は永遠です。

先生が考える大学院で学ぶことの意義は

その意味で大学院生とは初めて自分の目で見、読み、解釈して執筆する、という一人前の研究者になる訓練の時期です。苦しい研究の先に自前の研究世界というトンネルの先が見えてきます。この体験は何物にも代え難いものです。全く別の知的領域や世界がつながってくる。その知る喜びを味わうことは、他の世界ではなかなか味わえない独創の世界なのです。Try it!

下斗米 伸夫 教授03

先生の担当される講義の特色を教えてください

教師の役割とは、講義をするよりは、各自が自分のテーマを発見するための援助をすることでしょう。
もちろん、古典購読から、英文などでの最新の業績を知り、またロシアなどの史料を扱う方法をそれぞれ学びます。何が本物かがみえてくればしめたものです。

先生の考える国際政治学とは

同時に、国際政治学の対象は日々刻々動いています。ロシアの地にいて、大統領や首相と直接お目にかかって質問したりと、政治学者は単なる歴史家、分析者とも違った現代感覚を学ぶことも必要でしょう。多くの政治学者がカーやケナンのように、同時に歴史家であり、またジャーナリストであったのは偶然ではありません。あるいは筆者の柄ではありませんが、予言者である人もいます。